薄膜製品は極力汚さないようにして使用するのが常道です。まかり間違って表面に指紋・飛沫でも付けようものならそれらをクリーニングすることは高度な技術が要るかほぼ不可能、というのが今までの薄膜製品でした。でもSemrockの製品は違います。所定の手順・方法を守ればクリーニングできるのです。
●用意するもの:
・洗浄用の手袋を使用してください。指先に付着した水分・油分が製品に付着してしまうのを防ぎ、指先を溶剤から保護します。
・保護眼鏡を着用して下さい。溶剤が目に付着するのを防ぎます。
・糸くず無し綿棒、キムワイプ、ブロワー(エアスプレーでも可)もご用意ください。
・使用する溶剤はアセトン若しくはイソプロピルアルコール(以下IPA)をお勧めします。
●クリーニング手順:
1.手袋をはめ、はめた片手で製品を保持します。そしてブロワーで製品表面に付着したゴミを吹き飛ばします。最初は緩くブローします。この時、製品に対して斜めの角度でブローして下さい(垂直にブローすると風圧が製品全面にかかり手から製品が落下してしまう可能性があります)。ゴミが吹き飛ぶよう全面を移動させてブローします(右参照)。
2.ブローしても飛ばないゴミや製品表面の汚れが残っている場合:
エアーブローでも取れない埃や異物はフィルター表面に付着していると思われます。その場合は、機械的な力か化学的な方法で除去します。先ず糸くずの出ない拭き布か或いはレンズクリーニング紙を使って硬くて尖った先を持つ掃除棒を作ります。拭き布や拭き紙は何十にも折って三角形状にするか綿棒に何重にも巻き付けます。折った拭き布の代わりに糸くずの出ない綿棒をそのまま使用しても良いです。拭き布或いは拭き紙にアセトンまたはIPAをつけ過ぎない様に注意しながら湿らせます。拭き布或いは拭き紙が湿り過ぎの場合は軽く振って余分な溶剤を除去して下さい。
光学部品のクリーニングで重要なのは可能な限り一定スピードで一つの動作を持続させることです。製品表面を中心部分から外側に向けて8の字を描くように拭いたり(下右)、らせん状に拭き取ります(下左)。製品を吹き上げている途中でその動きを止めてないでください。
アセトンとIPAはそれぞれに長所短所があります。可能であれば両方を試してみて良い方を使用してください。一般的には、溶剤は強いほどより広い面の汚れをより早く除去する効果があります。しかし、重要なことは、溶剤は蒸発する前に非常に薄い膜で塗られて拭き取られねばならないということです。
IPAはクリーニング効果と拭き取り難易度のバランスが良いですがIPAはアセトンほどクリーニング力は強くありません。ですので、汚れを除去するためにより強い力で何度も拭く必要があります。しかし、IPAの乾燥速度はアセトンに比べ遅いので、汚れた面全体を拭う時間的な余裕があります。アセトンは優れたクリーニング力があって、色々な汚れを素早く除去できます。しかし、乾燥するスピードが非常に早いので、汚れが完全に拭い取られていないフィルター表面に吹きムラが残り易いという側面もあります。
更に、アセトンはプラスチックやほとんどの接着剤を急速に溶かすので、それらの周辺で使用する場合は注意が必要です。