Semrockのエッジフィルター、RazorEdge®シリーズ(最上位シリーズ)や蛍光観察用にも使用されるEdgeBasicTMシリーズ(ベーシックシリーズ)、の性能は変移幅(Transition Width)という仕様で規定されます。
変移幅=各レーザー波長から透過率50%までの波長範囲幅
エッジ急峻度=OD6から透過率50%までの波長範囲幅
通常この種のフィルターはエッジ急峻度という仕様で規定されることが多く、エッジ急峻度は確かにそのフィルターの実際の急峻度を表しているものの、エッジポジションが実際かつ厳密にどの波長に位置しているかということまでを規定しておらず、ことラマン測定に関してはこのエッジ急峻度の規定だけでは不十分です。そこでSemrockは、レイリー光(=レーザー光)に限りなく近いラマン光を計測することがラマン測定では求められることが多くレーザー光からのエッジポジションの位置を規定する方がラマン光計測では重要視されるという観点から、変移幅での規定を優先仕様と位置づけています。
図1は変移幅とエッジ急峻度の関係を示しています(RazorEdge®シリーズの785nm用(Uグレード品)にて)。また、上の表はSemrockの各シリーズのエッジフィルターの変移幅とエッジ急峻度の比較になります。
RazorEdge®シリーズはレイリー光のごく近傍のラマン光を検出することを高いS/N比で可能にします。これが最高グレードのEグレードになりますと極限レベルに到達します。
右のグラフはRazorEdge®シリーズのEグレードとUグレードの変移幅・エッジ急峻度を比較したグラフです(785nm用にて)。785nm用の場合、Uグレードだと約7.9nmの変移幅(=レーザー光を基準にしたエッジポジションは約792nm(126cm-1以下))
ですが、Eグレードだと変移幅は最高・最強の約3.9nm(同エッジポジションは約789nm(63cm-1以下))になります。
繰り返しになりますが、エッジ急峻度はエッジポジションが実際かつ厳密にどの波長に位置しているかということとは関係無くそのフィルターの実際の急峻度を表しています。
RazorEdge®シリーズのUグレードは各レーザー波長の0.5%のエッジ急峻度を有し、785nm用の場合約3.9nm(63cm-1)の急峻度になり、これがEグレードになりますと同0.2%となり同じく785nmの場合約1.6nm(25cm-1)になります。